Webアプリケーションで使われる認証方法には、さまざまな種類があります。それぞれの方法が、セキュリティレベルや使いやすさ、ユーザー体験に応じて適用されます。
ここでとりあえず認証方法は以下の11個です。
- フォーム認証
- HTTP認証
- トークンベース認証
- OAuth認証
- OpenID Connect (OIDC)
- 二要素認証 (2FA) / 多要素認証 (MFA)
- シングルサインオン (SSO)
- クライアント認証(SSL/TLS)
- 生体認証
- CAPTCHA認証
- パスキー(Passkeys)
1. フォーム認証
- 概要: ユーザーがWebページ上のフォームにユーザー名とパスワードを入力し、サーバーに送信して認証します。
- 特徴:
- 最も一般的な認証方法。
- セッション管理(クッキーやトークン)で認証を維持。
- セキュリティ: パスワードの強度やHTTPSの利用が重要。
2. HTTP認証
- 概要: HTTPプロトコルを利用して、ユーザー名とパスワードを直接リクエストヘッダーに含めて認証。
- 種類:
- Basic認証: ユーザー名とパスワードがBase64でエンコードされて送信される簡易な方式。
- Digest認証: パスワードがハッシュ化されて送信される、より安全な方式。
- 用途: 簡単なアクセス制限やAPIの認証に利用されることが多い。
3. トークンベース認証
- 概要: クライアントが一度ログインすると、トークン(e.g., JSON Web Token, JWT)が発行され、それを使って以後のリクエストを認証します。
- 特徴:
- トークンはHTTPヘッダーに含めて送信される。
- セッションの状態をサーバー側で持たない「ステートレス」な方式。
- セキュリティ: トークンの有効期限、署名、暗号化が重要。
4. OAuth認証
- 概要: サードパーティのサービス(e.g., Google, Facebook)を利用して、アプリケーションにログインする認証フレームワーク。
- 特徴:
- ユーザーが他のサービスのアカウント情報を使って認証。
- 「OAuth 2.0」ではアクセストークンを用いて認証と認可を行う。
- 用途: APIへの認証、SNSログイン機能など。
5. OpenID Connect (OIDC)
- 概要: OAuth 2.0を拡張した認証プロトコルで、IDトークンを用いてユーザーの認証を行います。
- 特徴:
- OIDCはユーザー認証を追加したOAuth 2.0の上位互換。
- ユーザー情報を安全に取得し、ユーザー認証とプロファイル情報の取得を可能にする。
- 用途: シングルサインオン(SSO)やWebアプリケーションの認証。
6. 二要素認証 (2FA) / 多要素認証 (MFA)
- 概要: ユーザー名・パスワードに加えて、別の認証要素(e.g., ワンタイムパスワード、SMSコード、物理的なトークン)を使うことで、認証を強化します。
- 特徴:
- 「知っている情報」(パスワード)+「持っている情報」(トークン、スマートフォン)で二重の認証。
- 用途: 銀行サイトや機密情報にアクセスするWebアプリでの強力なセキュリティ。
7. シングルサインオン (SSO)
- 概要: 一度のログインで複数のWebアプリケーションにアクセスできる仕組み。
- 技術: SAML、OpenID Connect、OAuthなどが使われる。
- 特徴:
- ユーザーは1つの認証情報で複数のアプリケーションにアクセス可能。
- ユーザー体験の向上と管理の簡略化。
8. クライアント認証(SSL/TLS)
- 概要: ユーザーのデバイスにインストールされたデジタル証明書を利用して、サーバーとクライアント間で相互認証を行う方式。
- 特徴:
- 証明書ベースの認証で、MITM攻撃を防ぐ効果がある。
- 高度なセキュリティが必要なシステムで利用されることが多い。
9. 生体認証
- 概要: 指紋、顔認識、声、虹彩認識など、身体的特徴を利用して認証を行います。
- 特徴:
- ユーザー体験が向上し、パスワードを入力する手間が省ける。
- セキュリティが高く、不正アクセスが困難。
10. CAPTCHA認証
- 概要: ボットの不正アクセスを防ぐために、画像認識や簡単なパズルを使ってユーザーの認証を行います。
- 特徴:
- 完全なユーザー認証というよりも、人間かどうかを識別する補助的な認証手法。
11. パスキー(Passkeys)
- 概要: パスキーは、デバイス上で生成される公開鍵と秘密鍵のペアを使用した認証方法で、パスワードを使わない認証を目指しています。ユーザーはデバイスの生体認証(指紋、顔認証など)やPINで認証を行います。
- 特徴:
- パスワードレス: パスワードを一切必要とせず、ユーザー体験が向上します。
- 公開鍵暗号方式: デバイス側で秘密鍵が安全に管理され、公開鍵のみがサーバーに保存されます。これにより、フィッシングやパスワード漏洩のリスクが大幅に軽減されます。
- デバイスに依存: パスキーはデバイスに紐づけられるため、ユーザーは認証する際に所有するデバイスが必要です。
認証方法ごとの比較
認証方法 | 説明 | セキュリティレベル | ユーザー体験 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
フォーム認証 | ユーザーがWebフォームに認証情報を入力し、サーバーが検証しセッションを維持。 | 中程度 | 馴染みがあるが、パスワードの強度や管理に依存。 | 一般的なWebアプリケーション |
HTTP認証 | ユーザーの認証情報がHTTPヘッダーで送信され、基本的なアクセス制御に使用。 | 低~中程度 | シンプルだがカスタマイズ性に欠け、再ログインが頻繁に必要な場合も。 | 基本的なアクセス制御、API認証 |
トークンベース認証 | トークン(例: JWT)を使用してステートレスな認証プロセスを維持。 | 中~高 | 便利でスケーラブル、ステートレスなセッション管理。 | API認証、マイクロサービス |
OAuth認証 | サードパーティサービス(例: Google)を利用してトークンでユーザーを認証。 | 高 | 便利でサードパーティアカウントが使用可能だが、複雑さが増す。 | ソーシャルログイン、サードパーティ連携 |
OpenID Connect (OIDC) | OAuth 2.0を拡張し、IDトークンを使用してユーザー認証とプロファイル取得を行う。 | 高 | 便利でシングルサインオンやアイデンティティ連携をサポート。 | シングルサインオン、ユーザー認証管理 |
二要素認証 (2FA) / MFA | パスワードに加え、SMSコードやハードウェアトークンなどの追加要素を組み合わせる。 | 非常に高い | セキュリティが強化されるが、ユーザーには追加のステップが必要。 | 銀行、機密データ保護 |
シングルサインオン (SSO) | 1回のログインで複数のWebアプリケーションにアクセスできるようにする。 | 高 | 複数のサービスへのアクセスを1回のログインで実現。 | 企業環境、マルチアプリケーションエコシステム |
クライアント認証 (SSL/TLS) | デジタル証明書を用いてクライアントとサーバー間で相互認証を行う。 | 非常に高い | ユーザーにとって自動的だが、デジタル証明書の設定が必要。 | 安全なWebアプリケーション、相互認証 |
生体認証 | 身体的特徴(例: 指紋、顔認証)を用いて認証を行う。 | 非常に高い | シームレスだが、生体認証機能を持つデバイスが必要。 | モバイルアプリ、最新のWebアプリ |
CAPTCHA認証 | 画像やパズルを使ってボットではないことを確認する認証手法。 | 低い | 一時的に中断されるが、ボット対策として有効。 | ボットアクセスの防止 |
パスキー | デバイス上の公開鍵暗号を使用し、パスワードなしでの認証を実現。 | 非常に高い | シームレスで安全だが、デバイスに依存する。 | パスワードレス認証、WebAuthn |