ハッシュ
は、データの「指紋」
のような役割を果たす仕組みです。これにより、入力されたデータ(文字列やファイルなど)を 固定長のハッシュ値
に変換します。ハッシュには、特定の安全性を保証するために必要な性質があります。
ハッシュの主要な特徴
- 元のデータを特定できない(不可逆性)
- 暗号学的ハッシュは、
一方向
の計算です。つまり、元のデータ(入力)からハッシュ値(出力)を計算するのは簡単ですが、ハッシュ値から元のデータを逆算することは非常に難しい
です。 - 例: パズルの完成図(ハッシュ値)を見ただけで、どのピース(元のデータ)が使われたかを正確に当てるのは不可能に近いという感じです。
- 暗号学的ハッシュは、
- 異なるデータは異なるハッシュ値を持つ(衝突耐性)
- 異なるデータからは
異なるハッシュ値
が計算されるべきです。同じハッシュ値が別々のデータから生成されることをハッシュ衝突
と言いますが、暗号学的ハッシュでは、この衝突が発生する確率が非常に低く設計されています。 - 例: 二人の人が違う指紋を持っているのと同じように、異なるデータは異なるハッシュ値を持つはずです。
- 異なるデータからは
- 少しの変更で全く違うハッシュ値になる(アバランチ効果)
- 元のデータがほんの少しだけ変わっても、ハッシュ値は大きく変わります。これを
アバランチ効果
と呼びます。これにより、データが改ざんされたことがすぐにわかります。 - 例: 1文字だけ違う文章でも、全く別のハッシュ値が生成される。たとえば「apple」と「Apple」は、ハッシュ値が大きく異なります。
- 元のデータがほんの少しだけ変わっても、ハッシュ値は大きく変わります。これを
- 固定長の出力
- 暗号学的ハッシュ関数は、どんな長さのデータを入力しても、
固定の長さ
のハッシュ値を出力します。例えば、SHA-256というハッシュ関数では、常に256ビット(64文字)のハッシュ値が生成されます。 - 例: 1ページの文章でも、1000ページの本でも、ハッシュ値の長さは同じです。
- 暗号学的ハッシュ関数は、どんな長さのデータを入力しても、
- 計算が効率的
- ハッシュ関数は、元のデータからハッシュ値を計算するのが
非常に速い
です。そのため、大量のデータや複雑なファイルでも、すぐにハッシュ値を生成できます。 - 例: あなたが長いメッセージを送る前に、その「指紋」を作るのに、ほんの一瞬しかかかりません。
- ハッシュ関数は、元のデータからハッシュ値を計算するのが
ハッシュの使い道
- データの整合性確認
- データが
改ざんされていない
かを確認するために、元のデータのハッシュ値を計算しておき、後でそのデータが正しいかどうかを比較することができます。 - 例: ダウンロードしたファイルのハッシュ値が、提供元のハッシュ値と一致していれば、ファイルが壊れたり改ざんされていないことが確認できます。
- データが
- パスワードの保存
- サービスやアプリがパスワードを直接保存せず、パスワードの
ハッシュ値
だけを保存します。ユーザーがログインするとき、入力されたパスワードのハッシュ値を計算して、保存されているハッシュ値と照合します。 - 例: パスワードが盗まれても、ハッシュ値しか保存されていないので、元のパスワードを簡単に推測することはできません。
- サービスやアプリがパスワードを直接保存せず、パスワードの
- デジタル署名や認証
- 電子文書や通信の安全性を確保するために、ハッシュ関数を使って、
デジタル署名
を行います。これにより、送信者が正当であることや、データが改ざんされていないことを証明できます。 - 例: メールが送られた際、内容が改ざんされていないことを確認するために、ハッシュ値を利用します。
- 電子文書や通信の安全性を確保するために、ハッシュ関数を使って、
代表的なハッシュアルゴリズム
ハッシュアルゴリズムは、データの「指紋」を作る技術で、データの改ざん検知やデジタル署名に利用されます。
- SHA-256(Secure Hash Algorithm 256-bit)
- SHA-2ファミリーの一つで、256ビットのハッシュ値を生成します。セキュリティが高く、ブロックチェーンなどで使われています。最も広く利用されているアルゴリズムの一つです。
- SHA-3
- SHA-2の後継であり、より新しいハッシュアルゴリズム。強力な耐性を持っています。
- MD5(Message Digest Algorithm 5)
- 一時期は広く使われていましたが、現在では
脆弱性
が発見され、安全性が低いとされているため、重要なセキュリティ用途では推奨されていません。
- 一時期は広く使われていましたが、現在では
- SHA-1
- 以前は標準的に使われていましたが、現在は脆弱性が指摘され、SHA-2やSHA-3に置き換えられています。
- RIPEMD-160
- SHAの代替として設計されたハッシュ関数の一つ。160ビットのハッシュ値を生成します。
- bcrypt
- パスワードのハッシュ化に特化したアルゴリズムで、ブルートフォース攻撃に対して高い耐性を持っています。
- パスワードの保存に利用することで、パスワードの漏洩リスクを軽減できます。
まとめ
ハッシュは、データの「指紋」
を作る技術で、次のような性質があります。
- 不可逆性: ハッシュ値から元のデータに戻すことができない。
- 衝突耐性: 異なるデータは異なるハッシュ値を持つ。
- アバランチ効果: わずかな変更で大きくハッシュ値が変わる。
- 固定長の出力: 出力されるハッシュ値の長さは一定。
- 計算が速い: データの量に関わらず、すぐにハッシュ値を計算できる。
これらの性質により、ハッシュはデータの安全性や信頼性を高めるために広く使われています。